就活の志望動機で「人の役に立つ仕事をしたい」はNGの理由

コロナ禍によって、突然学生の就活が厳しくなりました。
今年就活を迎えるみなさんには本当にお気の毒としか言いようがありません。
少しでも就活のお役に立てるよう、コラムを充実させていきます。

「人の役に立つ仕事をしたい」という志望動機は、なぜ面接官にヒットしないのか

学生の方に就活個人レッスンを行っておりますと、志望動機で多くの人が
「人の役に立つ仕事がしたい」と言うのを耳にします。

しかし、「人の役に立つ仕事をしたい」という志望動機は、面接官の心証にヒットしない可能性が高いのです。

なぜか?

人の役に立つ仕事をしたいという動機の裏側には、「感謝されたい」という気持ちが隠されているかもしれません。
感謝されつつ働くというのは、本当に理想の形。
確かに働き甲斐があります。

しかし、それがいかに大変なことか、望んでも望み切れるものではないことを、面接官はよく知っているのです。

こんな高い理想を持って働き始めた新人が、仕事をはじめて全く感謝されない期間が続いたら、この人は仕事を続けることができるのか。
そんな疑問と不安を面接官は抱くのです。

人の役に立つまでに新人を待っている試練

面接官は社会人経験が長いので、知っています。
甘いイメージを持って就職して来た人たちが、どんなに悩むかを。
いたずらに不安を煽るつもりはありませんが、事実をいくつか挙げてみましょう。

①人の役に立つには実力がいる

当然のことですが、人から感謝されるにはそれ相応の仕事の力が必要です。
しかし社会人になりたての人が、いきなり人様の役に立つことはむずかしいのです。
その試練の期間を耐え忍び、力をつけた人だけが、他人から感謝される実力を身につけることができます。

②企業とは人から感謝される場所ではないことが多い

働くとすぐにわかります。企業とは利益を追求する組織です。
だからある時、顧客の利益と企業の利益がぶつかる時があります。
その時、顧客に多少の損が出ても、企業の利益を追求せよと言わんばかりの指示が出ます。

広告の仕事を例に説明してみましょう。

30万円の広告費を顧客から頂いて、そこからの売上が10万円以下であることなどざらにあることです。
顧客は広告を出して損をしますから、感謝するどころか「金返せ」と怒ります。

次に求人の仕事。
企業は30万円の求人費用を三か月続けて、応募して来たのはたった3人。
そのうち面接に来たのは2人で、1人は無断キャンセルでした。

面接を受けた2人の内、1人は採用するにはあまりにレベルが低く、採用した1人は出勤日に出社せず、結局採用は0。
こういうことはよくあることなのです。

でもあなたが勤める会社は顧客にお金を返すことはありません。
営業担当者は顧客から罵倒されることもざらにあります。なにせ90万円をドブに捨てたも同じなのですから

これが働くということなのです。
それはメガバンクでも一流証券会社でも、自動車メーカーでも、どんな一流企業でも起こりうること。

その時、担当者は顧客が納得するまで謝り続け、ようやく解放されます。
そこから粘りを発揮して何度も同じ店(会社)に通い、「帰れ、用はない」と罵られながら、何とかその会社の経営者に認められ、また広告や求人を出してもらい(並大抵の努力ではありません)、よくよく話をし、その会社の特徴を洗いざらい研究し、ある時ようやく広告費に倍する売上を作り、またびっくりすような人材を採用できることがあるのです。

この時初めて顧客は喜び、「ありがとう。〇〇さんが担当してくれて良かった」と感謝の言葉をくれます。
ここまで来るのに、本当に長い長い月日と勉強と経験、忍耐が必要なのです。

③人の役に立つことは儲からない

働くとはそういうものです。
企業とは人の役に立つことを第一目標とはしていません。
もちろん利益を上げた上で、お客さんに喜んでもらえたらいいのですが、もしどちらかを取るとしたら、企業は自社の利益を優先します。

だからあなたに給料が払えるのです。

本当に人の役に立つ仕事がしたいのなら、無給でもいいと言い切る決意がいります
そういう人はごくごく少数でしょう

働くとはこれほど苦しいことなのに、安易に「人の役に立つ仕事がしたい」と口にする学生に、面接担当者は「ああ・・・」とただそう思うのです。

もしあなたがここまでのことを理解して、その上でも「人の役に立つ仕事がしたい」と言えるのならば、それは面接官の心に届く言葉になるかもしれません。

そのためには次のような準備をしてみてはいかがでしょう。

社会人としての先輩に就活の教えを乞う

さて、これから面接に赴く学生の方にアドバイスを送りましょう。
身近にいる大人たちに、働くとはどういうことか、会社ではどんな経験が待っているのかを、教えてもらうことです。

きっとここで私がお話をしたようなことが、ずらずらと出て来るでしょう。

それはアルバイトとは全く違う世界。

教えを乞う人は、実はあなたのすぐ身近にいます。
例えば、父親。そして母親。
彼らは長い間仕事の現場に立ち、甘いも辛いも全て味わって来た人生の先達。
それはそれは深い経験と現実を知っています。

それ以外にも、兄弟や学校の先輩。
バイト先の社員、立ち寄ったお店の方など、教えを乞う人たちはいくらでもいます。

質問は、その実情に肉薄する直球でいいでしょう。

  • 「仕事をしていて、どんな時に喜びを感じますか?」
  • 「どんな時が辛いですか?」
  • 「学生の時に思いもしなかった現実ってありましたか?」
  • 「バイトと正社員、何が違いますか?」
  • 「あなたを支えているものは何ですか?」

こんな話を聞かせてもらって現実を知ることは、あなたのためになります。
そこからもう一度働くということを考えて、そこから志望動機や自己PRを作り直せばいいでしょう。

ふだんから親と口を利いていない人は、人生の先輩として礼を持って接し、教えを乞うことです。
もしかすると、話を聞いた後で父親や母親に尊敬の気持ちを持つかもしれません。

それは、あなたの人生にとても大きなプラスをもたらすことになります。
このタイミングで就活をする不運を嘆くより、与えられた条件や境遇の中で全力を尽くすことが、あなたの未来を救うことになるでしょう。

ご健闘をお祈りしております。

「人の役に立つ仕事をしたい」という志望動機は、なぜ面接官にヒットしないのか:まとめ

  1. 新社会人がすぐに人の役に立つことはむずかしい
  2. 企業とは必ずしも人の役に立つ存在ではない
  3. 企業は人の役に立つことよりも自社の利益を優先する
  4. 学生は、「働く」ということを今のうちに社会人の人から聞かせてもらう経験が必要
  5. とくに父親、母親の話を真摯に聞くことはとても大事