クレーム対応、鎮火できる人炎上させる人

ビジネスにクレームはつきもの。
ただ、その対応次第で客の怒りは収まりもするし、燃え上がりもする。

クレームを受けてその客を上得意に変えてしまう対応もあれば
その客どころか、周りにも悪いイメージを広げられてしまう対応もある。

ほとんどの企業は、クレーム対応について教育をしておらず、社員の資質任せにしているところが多い。
そして、トラブルによるストレス、顧客の喪失、悪い噂の拡散というとんでもない結果を招いてから、ようやくクレーム対応の重要性に気づくのだ。

正論を言えば収まるどころか炎上する

ある歯科医院の受付。20分前から順番を待っていた患者が、急に怒り出した。
「私より後に来た人の方が先に診察してもらえるって、どういうこと!」

受付の女性は諭すようにこう言った。
「ドクターが違うからですよ。〇〇さんは院長先生担当でしょう」

しかし患者の怒りは収まるどころか、ヒートアップしていったのだ。
「私はね、15時に予約して5分前に来て、もう20分も待っているのよ! さっきの人は今来たばかりでもう中に呼ばれたのよ。おかしくない!」

受付の女性は、さらにこう言った。
「そう言われましても、院長が手が空かないと診察はできないので仕方ないですね」

「もういいわ!」と患者は医院を出て行き、戻らなかった。近くインプラント手術を予定している上客であったのに。
受付の彼女は正しいことを言うことしか対応策を持っていなかったようだ。
しかし、それでは大事な顧客を失うことになる。
しかもそれを周りで見ている患者もいる。彼らの信頼もそのまずい対応で失っている可能性が高い

クレームは客の助けてほしいという叫びだと受け取る

怒りを怖がる必要はない

多くの人がクレームを恐れるが、それは怒りにうまく対処できないのが原因だ。
怒りを恐がって、早く怒りを収めてほしいと焦る。また逃げようともする。
この態度にクレームを言っている人は、余計に怒りを感じ、
悪質クレーマーはつけこもうとする。
クレームから逃れようとする態度は、結局相手の感情を害することになる。

感情はエネルギー。うまく受け止めると力を失う

感情は全てがエネルギーだ。
逆らって押しとどめようとすると、摩擦を生んで燃え上がる。
とくに怒りは対抗すると余計に燃え上がり、怒りに火をつける。

「私より後に来た人が、私より先に診察を受けるの!」とクレームを言う人に
「ドクターが違うからですよ」と正論をぶつけるのは、
患者から見ると、「私の怒りを受け止める気はない」と映り、
それはつまり「私を大事にしていない」という思考へと転化する。
だから客は怒りを燃え上がらせるのだ。

怒りは、その気持ちをわかってあげようとするとやがて収まる

クレームに対応する一番の方法は、その気持ちを理解し、受けとめてあげること。
具体的には、共感を持って接することだ。

「私より後に来た人の方が先に診察してもらえるって、どういうこと!」という言葉には
「〇〇様は、もう長くお待ちですものね。申し訳ございません」
とその怒りの原因を言葉にしてあげることだ。

ただ「申し訳ございません」としか言わないのとでは、雲泥の違いがある。

すると相手の怒りのボルテージは1,2レベル下がる。
まだ落ち着かない場合は、もう少し相手の気持ちを言葉にすると良い。

「後から来た人が先に呼ばれると、いい気はしません。ごもっともです」
そう言ってから、「院長を見て来ますね。なるべく早く診察室に入ってもらえるようにしますから、おかけになってお待ち頂けるでしょうか」

こう伝えてから院長に報告に行き、「あと〇分ぐらいでお呼びできそうです。お待たせした上にご気分まで悪くさせてしまって申し訳ないです」と伝えられたら、相手の気持ちもだいぶ落ち着く。

これは自分の気持ちを理解し、自分のために動いてくれたことに対する喜びが生まれたからだ。
こうしてこのクレームをつけた人は、対応してくれた人のファンになる。

締めに院長から「だいぶお待たせしてしまって、申し訳ありません」という言葉を伝えれば、患者の気分はすっかり収まる。

10人中クレームを言う人は1人、9人はそっと去っていく

怒りを恐れず、それを癒す方法を身につけた人はビジネスの場では大変な戦力だ。
何しろクレームにうまく対処できれば、客は自分のことをわかってくれる人だと感じて、かえってその人のファンになる。

その会社に嫌な感情を持ったとしても、クレームを言う人は日本人の場合10人に1人らしい。
後の9人は黙ってその会社から去ってしまう。つまり顧客の喪失となる。
だから社員全員にクレームに対処する知識と経験を身につけさせ、顧客が小さな文句を言いやすい雰囲気を作ることは大事だ。重要な顧客を守ることになる。

クレームに対処する技術は、一般の人間関係にも大いに役立つ。
怒りに動じず冷静に対処できる人は、人間関係の頑丈な盾を持つことに等しい。
あなたは怒っている人に冷静に対処する強さを持っているだろうか。

クレーム対応、鎮火できる人炎上させる人:まとめ

  1. 人の怒りを恐がらない
  2. 客のクレームを受けたら、それはあなたに怒りをぶつけているのではなく、この気持ちから救ってほしいというSOSだと受け取る
  3. クレームには正論より、まず相手の怒りをわかってあげることが先決
  4. 「長くお待たせしていますものね」と相手の怒りのもとを言葉にする
  5. それでも怒りが続く場合は、ゆっくり話を聞き、怒りのもとを探し言葉にし続ける
  6. クレームにうまく対処できると、その客は対応してくれた人のファンになり上客となる