本に書けなかった「崖っぷちのSM女王様」

本に書けなかった「崖っぷちのSM女王様」

今回出版しました「またすぐに会いたくなる人の話し方」(三笠書房)の第1章にある
「解雇寸前!崖っぷちのSM女王様が、あっという間に顧客リピート率№1に」。

この内容、気になる方も多いことでしょう。
そこで、本では書けなかった秘められたエピソードをより詳細に書きました、

本に書けなかった「崖っぷちのSMの女王様」をお届けいたします。

「私ね、SMの女王様なんですよ」

もう十年以上前のこと
個人レッスンのご依頼が入り、教室にお出でになったのは
美魔女と呼ぶにふさわしい品のある女性。

個人レッスンの部屋にご案内し、しばし談笑。
飲み物を運んで来たスタッフの女性がその部屋のドアをカチャリと開けるのと、
彼女の口から言葉がもれるのが、見事に重なった。

「私ね」
「SMの女王様なんですのよ」

上品に彼女はそう言った。
「そうなんですか」と、感情の揺れを悟られぬよう平静を装う私。
コミュニケーションを教える私のところには、
様々な職種の方が訪れる。

ソープ嬢、裏カジノのスタッフ、パチプロ、競馬のジョッキー、女優、国会議員‥
それまでどんな職業の方が来ても、そう驚きはしなかった。
彼女を除いては。

もっと驚いたのは、うちのスタッフの女性だ。
彼女にも生徒の秘密については
興味を持たない、外で口外しないというこの世界の掟が十分染みついている。

だから「SMの女王様」のフレーズを聞いても
表情ひとつ変えずにお茶を出し、部屋を出て行った。
しかし、レッスンが終わった後、私にポツリと

「SMの女王様って、本当にいるんですね」とつぶやいていたのをよく覚えている。

SMの女王様の世界も、決め手は雑談

彼女のご依頼は、下がり続けるリピート率を上げること。
40歳と言う年齢とリピート率の低下で、
お店から「そろそろ潮時です、引退されては?」と打診を受けていたのだ。
「私にお手伝いできるのですか?」と心配のあまり聞くと、
「リピートの決め手は、雑談なんです」と彼女。

「SMの世界でも雑談がいるのか」とのけぞる私。
SMのお客さまには知的レベルの高い方が多いのだとか。
裁判官、大学の教授、高級官僚、一流企業の社長・・・

だから彼女は日経新聞やビジネス誌を読み、
政治や経済の話を雑談でしていたのだとか。
しかし、それではリピートはとれない。
彼女はそう悟ったようだ。

彼女には高校生の息子がおり、彼の大学費用を貯めるまでは
頑張りたいと言った。

SMの中身に興味を持つことは失礼にあたるので、
私からは詳しくは聞けなかったが、
彼女が雑談の中で教えてくれたことはある。

「SMでは本番はないの。だから私でも続けられるのよ」
「服も脱がなくていいのよ。実はSMの女王様は風俗の中では楽な方に入るの」
「みささん、エッチなビデオの見過ぎなんですよ」

「はい、申し訳ありません。見過ぎでした」
私の仕事には、人生の路地裏を覗ける瞬間が数多くある。
またひとつ人生の勉強をさせてもらった。

相手を主人公にして話をしてみましょう

私が彼女に指導したのが、本書のテーマ「相手を主人公にした話し方」
実は、自分に自信のある人間に、この話し方は最高の効果を及ぼす。

「そりゃそうだろう、私の話をみな聞きたいはずだ」

自信家の人間ほど、そう思うものなのだ。
だから自信家にはすきが多い。
あとはその自信のあるところを上手に引き出すスキルがあれば、赤子の手をひねるように喜び、相手に心をつかまれる。

そういう人たちは、あからさまに自慢をすることはない。
例えば、「部下にミスが多くて、けっこうストレスが溜まるんだよ」
こんな話から雑談がはじまりがちなものだ。

「いつも、相手を主人公に据えた話を考えてください」

私はこうアドバイスをした。
なれないスキルに、最初彼女も戸惑っていたが、もともと賢い方だったので、
しだいにコツを飲みこんで来た。

個人レッスンを数回受けると、彼女はこんな話ができるまでに成長していた。

「部下にミスが多くて、けっこうストレスが溜まるんだよ」とお客さまに言われたら、
「それは〇〇様が、あまりに物事の先が見えすぎるからですよ」
「部下には厳しいの? それとも甘いの?」
「じゃあ、私があなたに厳しくしてあげる」

女王様はとても満足したご様子で、卒業して行かれた。
ではどうして彼女がリピート率№1になれたことを私が知ったのか。

彼女が卒業して一か月後

彼女と同じ店の女性たちが、教室を訪れ始めたのだ。
「〇〇さんの紹介で来ました」
「〇〇さん、一か月でリピート率№1になったのですよ」
「お店ではこの教室のことはナイショにしているんですけど、私は仲良くさせてもらっているので、教えてもらいました」

彼女の勤めるお店は大阪市内に3店舗あり、在籍する女王様は80人。
その中でトップのリピート率をとったのだ。

「相手を主人公にした話し方」
つまり相手を話題にして話をするスキルは、こんなに効果が高いのか!

私も心から驚き、またこの話し方の正しさに気づかせて頂いたエピソードとなった。
このスキルは、特別な人のための話し方ではない。
ごくふつうにお勤めをしている方、ママ友付き合いに苦労する女性、
ラインで送るメッセージに苦労をしている方
どんな人にも応用が利く、人間の心をわしづかみにするスキルだと思ってもらいたい。

あなたにもぜひ使いこなしてもらって、
幸せや成功を引き寄せてもらいたいと願うばかりだ。