一緒にいて居心地のいい人悪い人 出版記念 一番いいところをこっそりご紹介

20歳年下の人とうまく話ができますか?

4月発売!「一緒にいて居心地のいい人悪い人」(学研)の出版を記念いたしまして、TALK&トークファンの皆さま方にそのクライマックスを少しだけご紹介させて頂きます。
ぜひご一読下さいませ。

今回は 第5章 20歳年下の人とうまく話ができますか? から

【6】若い人が聞きたいのは、失敗や挫折に直面した時の話

年下に尊敬されるには成功談か武勇伝という思い込み

若い人の話を聞くばかりがコミュニケーションではありません。あなたの話もぜひ若い人に聞かせてあげてください。
しかし、何を語ればいいのでしょうか。もっと直截に言えば、どんな話をすれば、若い人が「あなたの話を聞こう」と思ってくれるのでしょうか。

多くの大人が自分のいいところを話したがります。
それで若い者が尊敬してくれるだろうと思うからで、だからこそ男は成功談や武勇伝を語りたがるのでしょう。反対に成功談のない人は「人に話すことなどない」とあきらめて無口になります。

けれども、これは思い込みから来る誤解です。
若い人が年上の人に聞きたいのは、あなたがピンチに遭った時の話です。ピンチでもがき苦しむあなたが、そこでどう対処しどう立ち直ったのかという人間くさい物語です。
それは聞く人にとって将来の手本となります。自慢や武勇伝など役に立たないので、誰も聞きたくありません。

●優秀で魅力的な大人ほど、失敗談を話す

とくに優秀でスキのなさそうな人ほど、失敗談や挫折体験をするべきです。若い人にとっては手本となるのはもちろん、「至らない自分を隠す必要がない」という教訓を彼らも感じ取って安心できるでしょう。
例えば、こんな話はどうでしょうか。

「まだ20代のころ、当時の本部長にたてついて地方の支店に飛ばされ、やけになって会社に行かなくなった。するとその時の支社長がアパートまで来て、自分の話を聞いてくれた。
このとき言われたのが、『人の言葉に左右されず、自分の行きたい道を行け』という言葉。この言葉で考え方が変わって、地道に働いた。すると3年後、本部長が失脚して本社に戻れた。あの時の支社長の一言がなければ、自分はこの会社で今の立場になれていなかったはずだ」

この物語の中に、できれば当時の生々しい感情も添えてみましょう。
  「本部長のやり口には、本当に腹が立ってね」
  「支店にとばされたときは、まさに絶望したな」
  「3年地道に働きながらも、自分の無力さに時々負けそうになったよ」
経験者の本当の話を伝えられたら、若い人でなくても聞き入ってしまうでしょう。それは彼ら自身が将来ピンチになった時に、手本となる姿だからです。

●子どもにも、親の本当の姿を語る

子どもに対して「お父さんは子どものころ全然勉強しなかったんだよ」という話はできないと信じている親は多いものです。
しかし、いまのあなたの姿を見れば、子どもはあなたの子ども時代に関してなんとなく想像がついているものです。だからこそ、子どもには親の泥臭い話をどんどんしてあげるべきと私は思います。

とくに優秀な親ほど、子にはカッコ悪い姿を見せてあげるべきです。
  「高校生の時、塾の帰りに、親には勉強会と称して友達とカラオケBOXに行っていた」
  「おじいちゃんのエッチな本を、こっそり見ていた」
  「クラス一綺麗な女子のファンクラブを作ったが、会員の誰も相手にされなかった」

優秀な人ほどこうしてスキを作り、子どもや部下をほっとさせるゆとりが必要です。
「自分も至らないところがあっていいんだ」と思えることは、人にとっては生きて行く上で大事なゆとりとなります。それが理由で子どもが勉強しなくなったり、部下が仕事の手を抜いたりすることはありません。

●生徒はベストセラー作家の何を聞きたがるか

私は10年前にある本を書き、それが100万部を超えたことがありました。それ以降に知り合った生徒はみな、私が成功をいとも簡単に手に入れたと思っています。
しかし私はそれまでの20年近く、貧乏でしがない話し方教室を続けて来たのです。
この話をすると生徒たちはみなびっくり。興味津々で次々に質問をはじめます。

  「どうしたらそんなに長く希望を保ち続けることができたのか」
  「家族は反対しなかったのか」
  「どんな策をとったのか」
  「もし成功できなかったら、どうするつもりだったのか」

これらの問いかけに対し、私は苦しんだこと、もがいたこと、挫折したことを隠さずに話すように心がけています。
長く生きれば、誰にでもこのような修羅場、崖っぷち体験があるのではないでしょうか。そういう話を聞かせてもらえるなら、きっと若い人たちもあなたの話をもっと聞きたいと思うでしょう。
他人の生の物語に触れる機会は、そうはないものです。あなたが自分の人生のストーリーテラーになれたなら、年の差がどれほど離れた若い人とでも、会話に苦労はないはずです。

このコラムは出版されたばかりの野口敏の著作
「一緒にいて居心地のいい人悪い人」(学研)
第5章 20歳年下の人とうまく話ができますか?
 

【6】若い人が聞きたいのは、失敗や挫折に直面した時の話

よりお届けいたしました。

20歳年下の人とうまく話ができますか?:まとめ

  1. 若い人は年上の失敗談が好き(手本になるから)
  2. 優秀な人ほど「自分が駄目だったときの話」をするとよい
  3. よくできる親は、子供にすきを見せてあげると、子がのびのび育つ
  4. 苦しんだ経験などのネガティブな内容こそ、包み隠さず伝える