「話を聞く」とは「想像する」こと
「私は話を聞くのが好きだ」
「人の話を聞くばかりで」
「話を聞く方がラク」
そんな話をよく聞く。
でもこれは話をしっかり聞けない人の持つ特徴的な感想だ。
おそらくこの方々は相手の話を、何もしないで、ただ言葉だけを耳に入れている。
ただ聞こえているだけ。
ラクなはずだ。
たぶん相手は張り合いのないことだろう。
この人とまた話をしようとは思いにくい。
本当に話を聞くのがうまい人は、相手の話を想像しながら(映像で思い描きながら)聞いている。
まるで自分が相手になったかのような、そんな気持ちで想像するのだ。
例えば相手(男性)が
「息子がこの春にようやく大学を卒業して就職でしてね」
と話し始めた。
あなたならどんな場面を想像するだろうか。
「息子が会社で新入社員として働く姿」
「息子が就職活動をする姿」
などを想像する人も多いはず。
そこから出て来る言葉は
「どちらに就職されたのですか?」
となるだろうか。
しかし、これはあまりいい展開とは言えない。
「メーカーなんです」などと言われて、そこから話をはずませることは難しいだろう。
なぜなら話の主人公が息子になってしまうから。
会話はいつも目の前にいる人を主人公にすることが鉄則。
だから想像の中心には、父である相手その人自身を置くべきなのだ。
大学を卒業した息子を持つ父。
彼にどんなイメージが湧きますか?
「4年間、学費を払って来た父」
「息子からあまり感謝されていない父」
(子供とはそういうものです)
「子供の手が離れて、ようやくお金が自由に使える父」
そんな想像ができると、話は盛り上がる。
このイメージから
「4年間もよく頑張りましたね。学費を出すの、本当にしんどかったでしょう」
などという言葉が出ると、拍手。
これこそ相手が分かってほしい気持ちなのだ。
「息子がこの春にようやく大学を卒業して就職でしてね」
と「ようやく」という言葉を使ったのを、聞き逃してはならない。
「息子さんはお父さんの苦労をどれくらい分ってくれているでしょうね」
「これからゆっくりできますね」
「ゆとりもできるでしょう」
などと話を向けられたら、彼はそれはもうものすごい勢いで話をするだろう。
相手の話を想像するとは、相手の立場になりきって、その気持ち、そして過去や未来の姿にまでイメージを広げることを言う。
ただ聞いた言葉だけを想像するのではない。
ここまで分かってもらえると、相手は感激する。
自分と同じ体験をしてくれたあなたに大きな親しみと信頼を持つだろう。
彼は「この人とは気持ちが通じる」と思うはず。
すると、また会いたいと思い、時には仕事を任せたいとまで思う。
すぐには使いこなせない人も多いだろうが、
少しずつ取り組んでみてほしい。
コミュニケーションに大きな変化がやって来るだろう。
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