「知らない人としゃべっちゃいけません」と子供に教えるのは少し待って下さい
東洋経済新報社から「いつの間にか仲良くなっている人たちの世界」という本を出版しました。
ある新聞の投書にこんなものがありました。
元幼稚園の先生だった75才の女性が、横断歩道で信号待ちをしている入学したてと見える女の子に「車に気をつけてお家に帰ってね」と声をかけました。
すると女の子は突然防犯ブザーを鳴らして走り去って行ったのだとか。
おそらく親から「知らない人から声をかけられたらブザーを鳴らして逃げなさい」と教えられていたのでしょう。
この女性は「女の子に気の毒なことをした」と反省をしていましたが、こんな教育をしていたら今の子供たちは社会で様々な人たちといい関係を作って、力を合わせて仕事ができる大人にはなれないでしょう。
いえ、それは今まさに現代の企業で入社間もない人々が、上の世代や顧客とうまくコミュニケーションができなくて、成長が遅く、また早く退職してしまうという問題となって顕在化しています。
あるタレントさんがテレビ局で若い社員に挨拶をしたら、「私は担当ではないので」と言って立ち去って行ったと話していました。
関係のない人とは挨拶はしないものという思い込みをその若い社員は持っていたのでしょう。
知らない人と話さないようにしても犯罪は防げない
そもそも「知らない人と話しちゃダメ」という教えは、犯罪の抑止にはつながっていません。
児童2人を誘拐し殺人を犯したペルー人の犯人にルポライターが獄中の彼にインタビューし、「どんな子供が狙われやすいのか」と聞いています。
彼は「目を合わせて挨拶する子は狙いにくい。こちらを無視するような子を狙う」と答えています。
おそらく目を合わせて挨拶してくれる子には優しい気持ちが芽生えるのだと想像をします。無視するような子には人間性を感じず、「犯罪を犯してもかまわない」とでも思うのかもしれません。
犯罪から子供を守るのなら、知らない人としゃべらないようするのではなく、危ない状況を教えるべきです。
悪い人は個室や車に二人きりになるよう誘導する言い方をして来ます。
「子犬、子猫がいるから、お菓子をあげるから家においで」とか、
「道を案内してほしいから車に乗って」
「お母さんがけがをしたから車で病院に連れて行ってあげる」
「そんなことを言って家や車に連れ込もうとする大人がいたら逃げなさい」と教えればいいはずです。
相手が知っている人かどうかに関わらず、他人と家や車で二人きりになるのが危険だと教えることが、犯罪の抑止になるのです。
「知らない人としゃべっちゃいけません」という指示には、効果はないのです。
それ以外でも、暗い場所や人気のない公園で声をかけて来る人からは逃げなさい。(そもそもそんな場所に1人で行かない)
家のカギを開ける時は、後ろに人がいないかどうか確かめる。
これは大人でもホテルのドアを開ける時に、気をつけるべきことです。
触ろうとする人、抱き上げようとする人がいたら迷わずブザーを鳴らしなさい。
そういうふうに危ない状況を教えるべきです。
他に人がいる場所なら、知らない人でも挨拶をしたり話をしてもかまわない
他の人がいるところなら、知らない人でも挨拶やちょっとした会話ぐらいはしてもかまわないと教えてあげるべきでしょう。
75才のご婦人から横断歩道で声をかけられても危険はないと判断できるように育てるべきです。
ふだんから色々な大人を見て、人を見る目を育てなければ、大人になっても信じていい人いけない人、安全な人危険な人の見極めができません。
現代の若者は対面で説得されると、全く対応ができず詐欺などの被害に遭いやすいというデータも出ています。
小さい頃から人とコミュニケーションすることに慣らしておかないと、大人になってから犯罪に遭いやすくなるということです。
子供の時から他人との接点を作る教育を行う
親御さんを見ていると、子供にとって将来必要なスキルが何なのかわかっている人は少ないように見えます。
知らない人と全く話ができない子供は、大人になっても親しくない人とうまくコミュニケーションができないはずです。
それは親御さん自身が、社会で若い世代の人と接してみて如実にわかることでしょう。
お店で若い店員さんちょっとした雑談をしてみてください。
全く対応できず、まともなやり取りにならない人がびっくりするくらい大勢います。
勉強だけでできても、社会で活躍することはできないのです。
それでは社会に適応できず、仕事を転々とすることになって豊かにはなれないのです。。
中には「そういうことは大人になる過程で、自然に覚えることではないのですか?」と聞いて来る親もいます。
「横断歩道で初老のご婦人から声をかけてもらったら、ありがとうございますと答えることがコミュニケーションを自然に身につけることなんですよ。あなたは子供が自然にコミュニケーションを覚える環境を奪っていることになっていますよ」と答えると、驚いた顔をしていました。
いまの子供たちは自然にコミュニケーションを身につける環境にはいないのです。
子供に社会に通用するコミュニケーション力を授けたければ、
まずは親御さんが、知らない人と「いつの間にか仲良くなっている人」になることがスタートです。
子は親の姿を見てコミュニケーションを学びます。
あなたは自宅周辺や職場で出会う、あまり親しくない人、初めて会った人に自分から「こんにちは」と言っていい関係を作ることはできますか?
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